約 980,460 件
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/350.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1293190574/72-81 ――ジャリ 乾いたアスファルトを力強く踏みしめながら歩く。 ここは秋葉原駅電気街口。外に出るとすぐ目の前には大型電機店があり、数十メートル先に進むと 今や秋葉原では漫画やアニメなどを取り扱っていることで有名な某店舗が姿を現す。 さらにこの先の中央通りやそこからそれた裏路地へ進むと、これまたアニメや漫画、さらには フィギュアやコスプレ衣装などを売る店やパソコン本体やその部品、アクセサリを取り扱う店がが所狭しと並んでいる。 そう、ここは電気街であると同時に「オタク」の街でもあるのだ。そこに、一人の美少女が現れた。 「……ようやくこの地に辿り着くことができましたわ」 いつかの西部劇ものの映画のように砂混じりの風が吹き荒れた……ようにみえたのはさておき そう呟いた彼女はその場にそぐわない恰好をしていた。 地味なワイシャツにどこにでも売っているジーンズパンツ、そして頭にバンダナを身につけた時代外れの彼女の名は槇島沙織。 身長が百八十センチメートル以上もある彼女が道を歩くと道行く誰もが立ち止り茫然自失した。 おかしな格好をしてもその美貌は健在のようである。 「長かった……お家の行事で数ヶ月も空けてしまわれましたが、今やっと抜けることができました」 長く出かけることができなかった辛さからか、彼女は目を潤ませていた。 「ぐすっ……懐かしんでいる場合ではありませんでしたわね。もう戦争は始まったばかりですわ」 沙織はターゲットとなる店に目を向けた。 そこはラジオやフィギュアなどが売られている某会館とアニメのDVDや漫画、グッズなどが売られ 特定の日にはイベントも開催される某店舗が構えていた。 「まずはそこのラ○オ会館! コト○キヤへ赴き限定フィギュアをゲットしますわ! 次はそこのゲー○ーズ! イベント配布整理券を早めに受け取ること! あとは中央通りに出て……もう時間が勿体ないですわ! 待っててね、わたくしのグッズたち~!!」 彼女はにやけ顔で猛ダッシュで目標へと駆け抜けていった。 道行く人々は目を点にしながら未だ呆然としていた。 某メイド喫茶。 ポスターを掲げたリュックサックを椅子の上に置き、箱に入った戦利品のフィギュアを よだれを垂らしながら息遣いを荒くしながら見つめていた。 「ハァ…ハァ…やっぱりこのキャラクターはミニミニな衣装が最高ですわ。 はみ出してしまわれてもおかしくない格好で必殺技をぶっ放つ……なんて萌えるのでしょう」 セクハラおやじがここにいた。 店員のメイドや周囲の客は最初こそ格好が変であれど、彼女の美貌に釘付けになっていたが まるで他人を気にしない彼女の夢中っぷりにドン引きしていた。 「ハァ…ハァ…そしてこの足……ハッ!? い、いけない、つい夢中になってしまいましたわ!」 ま、気にしない♪今日のところは満足ですわ♪と頭の上にも音符があるように今日は気分上々のようである。 とりあえず頼んでおいたコーヒーを一口飲み、軽い食事をしようとメニューに手を伸ばそうとしたら、レジの方から騒がしくなっていた。 沙織は気になって近づいて覗いてみると、男の店員と客とで揉めている様だ。 「どういうことかしら? 折角こんなところまで足を運んできたというのに、サービスがなっていないんじゃないの?」 「ですからお客さん、そのサービス券はつい先日有効期限を切らしてしまいまして、もう使えないのですよ。 申し訳ありませんがお引き取り願いませんかね?」 「はぁ~……たった先日切らしただけで使えない、おまけにわざわざ足を運んだ客を追い払おうとする。来るメイド喫茶間違ったかしら?」 「はぁ~~~………シクシク…」 男の店員はレジの向こう側にいる他の店員の方を見る。しかし誰も彼に助け船を出す者はいなかった。 それだけその客に対応する自信がなかったのだろう。 沙織は店員と揉めていた客に注目していた。 長髪かつ黒髪で身長は一般女子中学生より低め、服は黒一色のパーカーに白の線が入った有名スポーツ会社のジャージを着た上から下まで黒一色の「少女」だった。 沙織は口をω(こんなふう)にしてニヤけていた。なにかを企んだようである。 「で、どうなの? このサービス券が使えるまで私は帰らないわよ?」 「ですから~」 「申し訳ございませ~ん♪ この子はわたくしの妹でして、探していたのでしたがこんなところにいたなんて。 連れていくので今までのことはなかったことにしてくださいな♪」 「えっ……そういうことでしたら」 「なっなんのつもりでムグッ」 沙織は少女の口を塞ぎ抱きながら自分の席へと戻った。 少女は口を抑えている手をほどこうとするが思った以上に力が強くそのまま為すがままになっていた。 ポンッと隣の椅子に座られて少女はいかにも不機嫌さを表していた。 「で、これはどういうことかしら? 見ず知らずの赤の他人を強引に連れてきた、この状況を詳細に説明してもらいましょうか?」 「まあまあ、いいではないですか。そのお詫びと言ってはなんですが、ご一緒にお食事というのはどうでしょうか?」 「食事……ま、まあ詫びならば付き合わないことはないわね」 「ふふふ、ではメニューをどうぞご覧あれ」 「むぅ……じゃあオレンジジュースを」 「ふむ、幼い女の子の○蜜、ですか。ではわたくしは」 「えっと……私の耳が腐ったのかしら? 今幻聴が聞こえたような気がしたのだけれど」 「まあ、幻聴だなんて。軽いジョークのつもりでしたのに」 「そのようなジョークを振られる私の身にもなってほしいわ。全く、やっぱり変えるわ。ロイヤルミルクティーを」 「はぁ、男性の○○ミルクですか。ではわたくしは」 「……ごめんなさい、選択ミスだわ。コーヒーを」 この後も色々と沙織の暴走発言が飛び交う中、しばらくして ホットコーヒーとホットティー、さらにはクッキーやケーキなどの洋菓子が六品も持ち込まれた。 「えっ……わ、私こんなの注文してないわよ? あの店員、さっきの件へのあてつけかしら?」 「いえいえ、これはわたくしが注文したものですの。さあ、遠慮せず召し上がれ」 「こ、こんなに? あなたが? い、いくらなんでもここまでしてなんて誰も……」 「いいですのよ。これはわたくしがしたくて行ったことなのですから。 さあ、飲み物が冷めちゃいますのでそろそろ召し上がりましょう」 「ちょ、ちょっと……はぁ、いただきます」 さっさと飲み物に口をつける沙織を見て、少女は呆れながらも 目の前にある煮詰めたりんごがのっているタルトに手を伸ばした。 フォークでザクザクと分け、口に放り込む。 ――美味しい…… 思わず顔が緩みそうだった。自然と一口、また一口とフォークが進んでいく。 気がつけば二つ目のケーキに口をつけていた。 「どうでしょうか、美味しいでしょう? ここのメイド喫茶のお菓子は美味しいと評判なのですよ」 無我夢中でケーキを頬張っていた黒猫は沙織の声で我に返り、慌てて口元をナプキンで拭いて平然を装った。 「ま、まあまあ美味しかったわ。やっぱりこの喫茶店を選んだのも間違いじゃなかったようね」 「ふふふ、まあそういうことにしましょう。……ところで、先ほどから気になることがあるのですが」 「なにかしら?」 「ケーキも美味しいですが、よくみるとあなたのほっぺたも 弾力がマシュマロみたいにありかつ柔らかそうでとても美味しそうですわ」 「ブッ!……いきなり何を言い出すの…!?」 「それにこんなに可愛らしい容姿をしているのだからそんな地味な格好ではなくもっと女の子らしい服を着なさいな。 例えば少し風が吹いただけでチラリとめくられるひらひらのミニスカートとか」 「そんな恰好をしている貴女に地味とは言われたくないわ。……というか、貴女、こういう風に言われたことはない?」 「エロ親父のような性格ねって」 「エロ親父のような性格だなってさ」 「んもうっどうしてわかったのですか?」 ところ変わってメイド喫茶とはガラッと変わりモダンな空間が漂う喫茶店で沙織と彼女はお茶をしていた。 今、沙織はメイド喫茶(オタクであることをばれないようにメイドがいることを伏せて)で とある少女と出会った時のことを彼女に話している最中であった。 「何でってわかりやす過ぎだからだろ。あんたは可愛い女の子を見るとデレデレするしな」 「失礼な! そんなことは」 「あ、後ろに小学生の女の子が二人」 「え!? どこ! どこですの!?」 「釣られてんじゃん……ほらよだれ吹きなってば」 「うぅ……騙しましたわね…」 自業自得じゃん、と彼女は呆れながら笑っていた。沙織は口をε(こんなふう)にしてすねてしまったようだ。 「それはいいとして、それでその後その子はどうしたんだ?」 「はぁ、それから……」 「んもうっ、さっきはエロ親父なんて言ってひどいですわ、プンプンッ」 「既にその話し方からして雰囲気を醸し出しているじゃない。 まあツッコみどころが多くて私は面白いからいいけど」 「毒舌が炸裂してますわね。……それで、楽しんでもらいましたか?」 「……そうね、予想以上に楽しめた、とだけ言わせてもらうわ」 「それは良かったですわ」 沙織はいつものように満面の笑みで少女に言った。 少女は気恥ずかしさからか沙織から顔を背けていてどんな顔をしているかよくわからない。 今はメイド喫茶を退出して、帰りの電車に乗るために駅に向かって歩いているところだった。 「で、でも、やはり貴女には悪いことをしたと思ってるわ。 メイド喫茶ではあんなに振る舞われたし……待って。 見ず知らずの人間に対するあの振る舞い、その話し方。貴女、もしかして……」 続きを言おうとしたが、沙織に口元を人差し指一本で抑えられてしまって しゃべることができない。そして沙織は自身の口にも人差し指を添えて「シーッ」と合図をしているようだった。 「そこまでです。これ以上の言及はやめましょう。お互い触れない方がいいでしょうし」 少女は沙織の表情を見る。先ほどの満面の笑みとは違う、何か得体の知れないものに取りつかれている様な暗い影が潜んでいる笑顔だった。 はたから見るとあまり変わらない惹かれるような笑顔に見えるのだが。 少女はフッと口を歪ませ、暴君の王女のようにニヤリと笑った。 「……そうね。お互い、知られてはいけない領域、他人が知らない方が幸せな『事』もあるでしょうしね」 「そういうことです」 沙織は先ほどの表情と変わらずに頷いた。 この後、二人は無言のまま歩き続けていた。お互いの顔を見ずに。 その時の彼女ら顔は他の通行人が見ると怖がられるぐらい影の残った無表情だった。 「……貴女」 「……なんでしょうか」 「貴女には心から信頼できる『友達』は、いるのかしら」 「……ええ、いますよ。一人だけですが」 「……そう、それならその友達は大切にしなくてはね」 少女は薄く微笑みながら沙織に向かって言った。少女が見せたこの日初めての笑顔かもしれない。 しかし沙織は無表情のままで、少女を一瞥もせずに前だけを見て歩いていた。 メイド喫茶の時とは逆の関係になったかのように。 この後、彼女らはほとんど会話もないまま駅まで歩き続けた。 「………」 「沙織」 「………」 「沙織ってば!」 「……え? なんですの?」 「なんですの、じゃないよ! さっきから呼んでるのに全然返事しないんだから。 だからその後その子とはどうしたんだよ?」 「……ええ、帰りに趣味の話とかして帰りましたわ」 「なんだぁ~それだけかよ、つまんないの。ちなみにその子はどんな趣味持ってたんだ?」 「え~と、マスケラを」 「マスケラ?」 「あ! 違います! 『マスカラ』をそろえることらしいですわ!」 「ふ~ん、けっこう変わってるんだなその子。つーかそんなに慌てるなよ。 あんたが間違えることなんて日常茶判事なんだしさ」 「そ、そうですわね! な、何をしているんでしょう、わたくしは!」 「お、おい、大丈夫かよ……そういえば、あんた稽古あるとか言ってたけど大丈夫なの?」 「あ! 申し訳ございません! お先に失礼いたします!」 いつもの恒例の「もっと無礼講でいこうぜ…」と言いたくなるぐらいの 丁寧な挨拶とお辞儀もせず、沙織は荷物を持つと急いで店から退出した。 「はいよっと~。珍しいな、あいつがあんなに焦るなんて。なにかあったのかな?」 彼女はコーヒーを一口すする。熱はだいぶ冷めてぬるま湯程度の温かさだった。 苦みを楽しむのも半減してしまったようだ。
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/7150.html
779 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/28(金) 19 04 52.30 ID ??? もう、兄弟とか関係ないよね。 780 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/28(金) 19 26 17.49 ID ??? ユノア「もう、兄妹とか関係ないよね」 マユ「もう、兄妹とか関係ないんだって」 アセム「」 シン「」 781 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/28(金) 19 33 08.31 ID ??? 780 ノイン「二人とも、特訓の成果が出ているようだな!」 ゼクス「見ず知らずの人間をヤンデレに仕立てるは正義なのか!!ノイン!!」 五飛「人のセリフをパクるのも正義なのか!!ゼクス!!」 妹蘭「忙しい時間帯に仕事をサボるのも正義なのか!!五飛!!」 サイシー「はいはい、ケンカは外でやってねー(棒)」 788 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/30(日) 07 17 47.72 ID ??? ノイン「全て覚えているさ。ゼクスが最後にメールを返信してくれてから13時間と38分20秒、 ゼクスが最後に『愛してる』と囁いてくれてから48時間と09分30秒、 ゼクスが最後に私と×××してくれてから78時間と21分50秒・・・」 ゼクス「待て最後のは身に覚えがないぞ!3日前はコロニー連合の会合に出席して酔い潰れ、 ノインに迎えを頼み・・・それからどうなったんだろうか?」 リリーナ「お兄様、責任はちゃんと取りましょう」 パーガン「人生設計は計画的にですよ。サンクキングダムの世継ぎの問題なのですから」 ノイン「ゼクスはまるで飢えた野獣のように激しく私のことを・・・」 ゼクス「嘘だぁぁぁぁ」 リボンズ「良いじゃないかどうせ約束された未来なんだし」 シュウト「ねぇ×××って何?」 アムロ「子どもはまだ知らなくて良いっ!」 789 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/30(日) 08 32 38.26 ID ??? 788 カミーユ(・・・・・・普段からヤりまくってるくせによく言うよ」 リボンス(・・・・・・この手の話で未来の僕がその弟に隠そうとしてもお前が言うなだよね」 ゼクス(・・・・・・いつ周りの女性がノインみたいになってもおかしくないなこの人の場合」 アムロ「やあ君たち、途中から口に出てるぞ☆」(#^ω^) ...... ........ ;;;;;;; γ ⌒ ⌒ `ヘ イ "" ⌒ ヾ ヾ ドガァァァァァァァァン..... / ( ⌒ ヽ )ヽ ( 、 , ヾ ) ................... .......ゞ (. . ノ. .ノ .ノ........... ........ ゝ、、ゝ.....| |..., , ノソ ....... _ _i=n_ ._ [l_ .._....,,. .-ー;''! i;;;~-ヽ_ii_i=n_ [l h__ /==H=ロロ-.γ ,~ー'''l ! |'''ーヾ ヾ 「!=FH=ロロ ¶ -幵-冂 ( ( |l | ) )=HロΠ=_Π Π=_Π「Ⅱヾ、 ⌒~"""''''''⌒~'"´ ノ;;'' 日lTΠl .... Д日lTl,,.. ''''" ""'''ー-┬ーr--~''"" Д日lT FH=n. ' | | FL日l」 ロΠ= . . ノ 从 ゝ . 田 /==Д 口=Π田 . ↑3人 . Γ| ‡∩ Γ| ‡∩Π .... ... Eヨ 日lTlロ Д日lTlロ_Π ....... ... 田 凵Π_=H =Hロ凵Π=_Πロ=HロΠ ................. 口ロロH「l.FFl コウ「アムロ兄さんってばまーた試作二号機なんか使っちゃって」 刹那「シン兄さんより激しい突っ込み・・・・・・やはり真のガンダムであるアムロ兄さんは 伊達ではない!」 シン「むしろボケじゃねーのか?アレ」 ナニヤッテルンデスカアムロニイサン!ゲッコウチョウ! シン「あ、ロラン兄さんが∀で飛んできた」 コウ「かなりキレてるな・・・・・・巻き添え食わないうちに逃げるぞ」 790 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/06/30(日) 10 06 44.71 ID ??? 789 アル「バーニィがミンチよりも(ry」 ウッソ「また酒楽のお姉さん達がミンチよりも(ryになるなんておかしいですよアムロ兄さん!!」 シン「(この流れだとマユちゃんも)」 マユ「お兄ちゃん、アムロさんっていつもお仕置きにGp02を使うの?」 シン「いや、普段はハンマーかνガンダムだけど……ってミンチよりも(ryになって無い!?」 ジャック「あんたがこの子の兄さんか?」 シン「違います。それより誰?」 マユ「仮面のジャックおじさん。マユのこと助けてくれたんだよ」 ジャック「ヒナ鳥は殺さない、それが俺のルールだ」 シン「そうですか」 その頃 ロラン「あらら、これは僕が月光蝶やる必要無いですね」 ガトー「えぇい、どこのどいつだ!?私の機体をバラバラにしたのは!!」 アムロの乗ったGp02はデスフィズによって細切れ状態になっていた。 クロスボーンゴーストのジャックを出したくて便乗してみました。
https://w.atwiki.jp/jumpbattleroyal2/pages/43.html
第010話 報酬は白衣の天使の微笑み ◆WItgwMh0IA おれは冴羽リョウ、またの名をシティーハンター。その筋じゃあ、ちったあ名の知れたプロのスイーパーだ。 美女のボディーガードから殺しまで手広く請け負う。つまり、街のゴミどもを始末する清掃人。 てな訳で、常に危険と背中合わせの毎日だ。 それにしても、今回はやっかいな事に巻き込まれちまった。 おれとしたことが目が覚めたら殺しを強要された挙句、再び目が覚めた時には見知らぬ島に放置されていた。 香の姿も見えないし、冴子も海坊主もミックも見当たらない。 まったく何がなんだか訳が分からんぜ。一体、これからどうなっちまうんだか…。 リョウは徐にその“白衣を着た女性”のスカートを捲り上げた。パンツの薄い布地に包まれた白くて形の良い臀部が丸出しになる。 「きゃ!」 白衣の女性は自分の意思に反して捲くり上がったスカートに驚き、短い悲鳴を漏らすと、スカートを必死に抑えた。 いくら抑えようともスカートは捲くり上がったままだ。何故ならリョウの大きな手が女性の努力を阻むようにスカートを抑えたままだった。 「わぁお!もっこりヒップちゃん!」 柔らかそうな双丘に眼を釘付けにして、リョウは歓声を上げる。香が見たら間違い無くハンマーでお仕置きされている場面だ。 「や……やめてください!」 なんとかリョウの手から逃れると、白衣の女性はリョウをきつく睨んだ。 「なんなんですか、貴方は…………!?」 見ず知らずの女性のスカートを捲り上げ、観察するなど、セクハラの域を超えている。白衣の女性が憤慨するのも無理はなかった。 ただ、相手は新宿の種馬の異名を持つ冴羽リョウだ。馬の耳に念仏というやつだった。 「あっれー?怒っちゃったー?そんな怖い顔してないでさーリョウちゃんと遊ぼうよー」 「やめてください!大声出しますよ?」 「いいじゃんいいじゃん、ねー?遊ぼうよー」 いつまでもしつこく食い下がるリョウに白衣の女性も呆れ顔。その顔は明らかにリョウを軽蔑していた。 「私はこんな事してる暇無いんです。早くあの子達を探さなくちゃ…………!」 白衣の女性は大真面目に言った。 さすがのリョウもふざけてられないほど、白衣の女性は真剣だった。 「訳ありかい?」 さっきまでの変態ストーカーが一変、リョウはシリアスモードに切り替わっている。 こうしていれば、リョウはかなり格好良い。中にはこのギャップの大きさが好きだという女もいるとかいないとか。 とにかくリョウも悪ふざけを止め真剣になったので、白衣の女性の方も重い口を開いた。 「日々野君達を…………うちの学校の生徒達を探さなくては…………。ごめんなさい、貴方の相手をしてられないんです」 白衣の女性は丁寧な辞儀をして、生徒達を探しに行こうとした。 「待ってくれ、話を聞こう。おれに話してみてくれないか?」 「貴方に…………ですか…………?」 疑いの目。まだリョウを信用していなさそうだ。 「なぁに、こう見えてもおれはプロのスイーパーさ。こんな物騒な島を一人でうろつくより、おれのような腕利きと一緒に探した方がずっと安全だと思うがね」 とか何とか言いながら、リョウの腕はちゃっかり白衣の女性の肩をしっかり抱いている。 白衣の女性は半信半疑でリョウの横顔を見上げていた。 「ほう…………要するに、春香ちゃんの所の生徒さんは何を仕出かすか分からない問題児って事か。面倒に巻き込まれないうちに、手綱をつけちまおうって訳だな」 「問題児なんて…………!あの子はとても良い子です。ただ少し元気があると言うかお調子者と言うか…………とにかく悪い子ではありません」 生徒を庇う春香の姿は、リョウに好感を抱かせた。 春香が心根の優しい娘だという事はそれだけで伝わって来ていた。 「まあ何にしても生徒の身が心配だって事だろ?だったら早いとこ出発しようぜ。もう面倒な事に巻き込まれているかもしれない」 「でも…………いいんですか、冴羽さんも誰か探さなくちゃいけない人がいるんじゃ…………?」 「なぁに心配はいらん。どいつも簡単に死んじまうような奴らじゃないからね。そのうち何処かで会えるさ」 リョウの言葉は素っ気無い。春香に要らぬ気遣いをさせない配慮だった。 この純真無垢で優しい心の山ノ上春香を、これ以上不安にさせてしまうのは男が廃るというものだ。 「ありがとう冴羽さん」 春香が笑いかけてくれた。 「フッ……報酬は前払いで貰っておくよ」 「え?」 春香は知らなかった。春香の微笑が最高の報酬になった事を―――――― 【G-08/平野/一日目・午前1時ごろ】 【男子13番 冴羽リョウ@CITY HUNTER】 [状態]:健康 [装備]:特に無し [道具]:支給品一式 [思考]:1、あわよくば春香ともっこり 2、春香を守る 3、香、冴子、海坊主、ミックを探す 【女子15番 山ノ上春香 @BOY】 [状態]:健康 [装備]:特に無し [道具]:支給品一式 [思考]:1、日々野や一条を探す 2、リョウについて行く 二人の支給品は次の作者に任せます 投下順 Back 止まれない理由 Next フライデー中島の憂鬱 時間順 Back 止まれない理由 Next フライデー中島の憂鬱 初登場 冴羽リョウ Men in Black 初登場 山ノ上春香 Men in Black
https://w.atwiki.jp/yomedousi/pages/1374.html
スレ49-920 920 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 22 07 48.76 0 ギリギリの託児話に便乗。 義兄嫁の「イトコ産め」攻撃が弱まったかと思ったら 今度は子梨の我が家に託児しようと、義兄子に「遊びに行きたいねー」と吹き込みだした。 義兄子は5歳の保育園児。 ウトメと同居している義兄家と我が家は飛行機を乗り継ぐ距離。 おまけに我が家は社宅で、他の住人は単身者のみ。 職種によっては昼夜関係のない人もいるし、当然周りに子供はいない環境。 それなのに 「兄弟もイトコもいない可哀想なこの子に思い出を!!」 「いつも我が家に来る一方で不公平だ!!」としつこい。 “我が家”ってその家、経済的理由で同居を頼んだあなたたちのために ウトメが全額支払って建てたものですよね?(私達は年に一度帰省するだけ) “可哀想なこの子”って、一人っ子の選択をしたのはあなた自身ですよね? いい加減に悲劇のヒロインはやめて欲しい。 自分より一回り以上年上の人の嘘泣きとか、見ていられない・・・。 921 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 22 27 39.08 0 「ぜひともご当地の観光においでください」といって 旦那だけ義兄夫婦とファミレスで食事して、その後ホテルに送り届けるだけでいいよ。 923 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 00 54 48.36 0 921 おいでくださいなんて言いたくないよ。 950 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 13 21 52.96 0 920です。 921 義兄子はまだ小さいし、最初はてっきり家族で旅行に来るんだと思ってた。 それなら(不本意だけど)親戚付き合いとして食事くらいは・・・と腹を決めていたんだが 義兄嫁から 「お金が無いから私達大人は行けません・・・残念です。シクシク」 「飛行機には責任もってちゃんと乗せるから大丈夫だよ!」とメールがきて 義兄子だけをこっちに送ろうとしていることが判明。 保育園児が1人で移動できる距離じゃないし、何よりなぜ私達が世話をしなくてはいけないのか。 お金が出せないのなら、近場で家族三人で過ごす方がよっぽど思い出になると思う。 これが我が家の転勤のたびに繰り返されるからウンザリ。 彼女の頭の中では 転勤=会社のお金で旅行=ズルイ!=子の思い出作りに協力しろ らしい・・・。 923 私も言いたくないw まだ越して来たばかりだから夫婦でゆっくり観光したい。 義兄一家のドライバー&観光ガイド&パトロンはごめんだ。 951 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 13 35 08.03 O 950 毎回ならハッキリ迷惑だし子供だけ託児して楽したいだけにしか見えないと言ってやれ。 952 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 14 39 35.29 0 951 一度 「責任持てないし、環境的にも無理。勝手に子を泊まらせようとするな」と言ったら シクシク嘘泣きをしながらウトメに 「忙しい私達はこの子の思い出をなんとか作ってあげたくてお願いしたのに・・・」と言い、 いまだに初孫フィーバー中のウトメがやや義兄嫁に同情的になってしまった。 空気な義兄は「いい子だから大丈夫。」としか言わない。 家中を走り回っている義兄子が、激狭段差だらけの我が家で何も起こらないとは思えない。 激しく近所迷惑だし、こちらは車をレンタルしないと空港へも行けないような土地柄。 しかしあまりにしつこいので最近は夫も「血縁だし仕方ないのか?」と自信なさげ。 いや、実際に世話をすることになるのは数回しか会ったことのない他人の私ですから。 953 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 15 14 23.95 0 子の思い出づくりは親の責任。 じじばばが同情的なら、じじばばが手伝えばいいじゃんね~ 955 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 15 18 12.05 0 そりゃ旦那に丸投げだろ 957 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 15 57 17.81 0 義兄に文句言えないあなたの夫も空気のようですね。 958 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 16 04 10.56 0 953 ウトメはよく義兄子の面倒を見ているし、金銭的にも助けているそう。 でも同居なので“お泊まり”の経験がさせられないと義兄嫁は言う。 義兄嫁の親兄弟は近所在住だけど、皆1人暮らしで働いているから頼めないと。 そこで白羽の矢が立ったのが“あちこち旅行して楽しんでいる”私達夫婦。 以前私達が私の祖母宅(これも飛行機の距離)に泊まりに行き、お土産をウトメに送った時には 「なぜ内緒で行った?うちの子も泊まらせてあげて」とも言われてドン引きした。 そんなに“お泊まり”の経験なんて大事なのだろうか? 私は保育園児を1人で飛行機に乗せてしまおうとする思考回路が理解できない。 「子供を預けて自分達は夫婦水入らず。」 「義弟夫婦は貴重な子育て体験が出来てみんなハッピー!」 そんなこと考えているんじゃないかと勘ぐってしまう。 955 夫は毎日日付が変わる頃に帰ってきて、土日は直前にならないと休めるかわからないから 実質私が全て面倒をみることになる予感。 957 うん、家にもいないし空気だわw 959 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 16 29 43.80 0 958 >「子供を預けて自分達は夫婦水入らず。」 >「義弟夫婦は貴重な子育て体験が出来てみんなハッピー!」 これ、ビンゴじゃないかなぁ。 だいたい保育園児一人で飛行機なんて、乗せてもらえるもんなの? 小さい子って、自分の家族が世界の全てみたいなもんじゃない? なのにたった一人で長時間旅行させられて、全然知らない場所で 叔父さん叔母さんとは言え、年に数回会うぐらいの人に預けられるなんて、 すごく可哀想。 思い出思い出って言うけど、幼児の頃の記憶なんて、私はほとんどないんだけど、 そんなことされたら、一人で不安で怖かった記憶だけ残りそうな気がするなぁ。 960 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 16 39 17.79 0 959 6歳以上なら可能らしい。 ttp //www.sora-tabi.com/kodomo.html 920の義兄子は5歳だから、ダメだね。 966 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 17 21 35.13 0 初孫フィーバー中なら、ウトメが自分らで旅行に連れてってやればいいのに。 967 名前:名無しさん@HOME[sage] 投稿日:2011/11/30(水) 17 23 41.58 0 966 ウトメも義兄嫁が怖くて連れていけないだろ Next→49-938
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/10555.html
登録日:2011/06/01(水) 20 17 35 更新日:2023/12/29 Fri 10 59 58 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 04年夏ドラマ 70年代テレビドラマ TBS キスミー タチムカウ テレビ朝日 ドラマ ニューヨーク フジテレビ 人間の証明 名作 実写化 小説 戦後 文学 映画 東映 松田優作 森村誠一 母 西條八十 親子 角川 角川書店 詩 講談社 邦画 麦わら帽子 母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね? ええ、夏、碓氷から霧積へ行く道で、 谷底へ落としたあの麦藁帽子ですよ。 母さん、あれは好きな帽子でしたよ。 僕はあの時随分悔しかった。 だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。 『人間の証明』とは、森村誠一の代表作であり、映画化を前提に角川春樹から依頼されて執筆した推理小説である。 松田優作主演の有名な映画の他に1978年、1993年、2001年、2004年にTVドラマ化されている。 【あらすじ】 4月27日、ニューヨークのハーレム出身の黒人男性が日本で刺殺された。 男の名はジョニー・ヘイワード。 彼は死に際に「ストゥーハ」と謎の言葉を呟いてから倒れており、 警察は彼が持っていた『西條八十の詩集』からそれが《ストローハット=麦藁帽子》であることを突き止める。 そしてそれと同じ頃、ある政治家の息子が通りかかった女性を轢き殺し、死体を海に始末してしまう。 その政治家の息子と黒人のジョニーには意外な繋がりがあったのであった……。 【主な登場人物】 ◆棟居刑事 映画版では松田優作が演じた主役刑事。フルネームは「棟居弘一良(むねすえ こういちろう)」。 普段は冷静で無口だが、自分の過去に関することには我を忘れて突っ走る。 幼少期に見ず知らずの女性である八杉恭子を米兵から助けようとした父親が彼らに殺されてしまい、 孤児として乞食のような暮らしをしていた過去を持つ。 ジョニー・ヘイワード殺人事件の担当刑事となるが、 それは彼にとって自分の辛い過去との対面に他ならなかった……。 その後『棟居刑事シリーズ』の主人公として数々の事件に遭遇するが、なぜか『人間の証明』とシリーズ作品両方を通しで演じた俳優はいない。 ◆横渡刑事 棟居刑事の相棒でジョニー・ヘイワード殺人事件の担当刑事。 何かと先に突っ走る棟居刑事とは違い、比較的穏和な性格。 ◆八杉恭子 この物語の鍵を握る人物で一流のファッションデザイナー。 泥まみれの人生の絶頂期を迎えていた彼女を襲った皮肉な運命とは……。 ◆郡陽平 八杉恭子の夫で有力な政治家。 映画版では三船敏郎が演じていたが、特別出演なので出番が少ない。 ◆郡恭平 郡陽平と八杉恭子の息子。 汚い政治家である父を嫌っているが、彼自身もあまり良い人間とは言えない。 八杉恭子の大事な麦藁帽子であり、陽平から独立して彼と二人で暮らすために彼女はデザインの勉強を始め、 遂に独立できる所までたどり着くが……。 ◆ジョニー・ヘイワード スペイン出身の黒人であり、ニューヨークのハーレムに住んでいたが、 何故か遠く離れた国である日本で何者かに殺されてしまう。 彼が日本へ訪れた理由とは? ◆ウィリー・ヘイワード ジョニーの父親。 過去に3年間日本に滞在していた過去があるが、 この事がジョニーが日本へ来たことに関連しているのだろうか? ◆ケン・シュフタン刑事 ジョニーとウィリーの住居があるニューヨーク24番街の担当刑事。 ニューヨークへ合同捜査をしに来た棟居刑事の相方となるが、 彼は過去に棟居刑事の父親を殺した米兵達の一員であり、今回の事件の元凶と言える人物。 様々な悪事を行ってきた彼には因果応報な末路が待っている。 【主題歌】 「人間の証明」 映画版でジョニーを演じたジョー山中が歌った主題歌。 歌詞の内容は西條八十作の詩『帽子』を英語に訳したものである。 母さん、あの時、向こうから若い薬売りが来ましたっけね。 紺の脚絆に手甲をした、 そして拾おうとして、随分骨を折ってくれましたっけね。 けれど、とうとう駄目だった。 なにしろ深い谷で、それに草が、 背丈ぐらい伸びていたんですもの。 母さん、ほんとにあの帽子どうなったでしょう? その時傍らに咲いていた車百合の花は、 もうとうに枯れちゃったでしょうね、そして、 秋には、灰色の霧があの丘をこめ、 あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。 母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、 あの谷間に、静かに雪が積もっているでしょう。 昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、 その裏に僕が書いたY・Sという頭文字を、 埋めるように、静かに、寂しく。 帽子 西條八十 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] え~と、八杉恭子は原作では教育評論家だし、シュフタン刑事は棟居とは終戦直後の対面のみなのでそこらへんは分けて説明した方がいいと思います。 -- 昼太郎 (2019-03-14 03 26 50) 菱沼さんのオーダースタンプ -- 名無しさん (2019-09-08 07 42 53) 因果応報のオンパレード… -- 名無しさん (2021-09-20 14 47 07) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/280.html
「……なんか……ダルイな……」 一難去ってまた一難…なんて言葉があるけれど…それってかなり極端な例ではないだろうか そりゃ、少年誌のバトル漫画じゃ次々と新しい脅威の対象やらライバルやらこの後どうなる!! 的な流れを止めちゃいけないってのも理解できるんだよ? ああ、俺もそんなチープな流れは嫌いじゃないさ…でもいざ我が身に降りかかったとなったときはまた別ってもんだ 俗に言う「戦士に休息を」ってやつなのかねぇ? 昔はこんなにくたびれた事なんてなかったんだが…… いかんせん俺も老けたのか? ……嫌だぞ、25の若さで自分の神姫に介護してもらうなんて…… 「なにをボケッとしてるんですか? ご主人様」 「……考え事してるマスターに対してその発言は酷すぎやしないか?」 「そうですか? 『パートナー』としてはもっともな忠告だ…とでも解釈してください」 あなたの中での俺はどんだけポジティブ思考なんですか… そこまで前向きならむしろ憐れ…… 「ん? 出かけるのか?」 「はい、フェレンツェ博士の研究所の方に…」 「ミコとユーナは? 一緒じゃないのか?」 「今日は雄也さんと一緒に『秋葉原、武装パーツめぐり&グルメツアー』なんだとか」 「? ミコかユーナのどちらか一人とならわかるんだが、なんで二人同時なんだ?」 「なんでもお互いにボディガード役を兼ねているらしいですよ?」 前言撤回、俺よりも憐れなヤツがいた たかられ損だな雄也…… 「では行ってきます。夕飯までには戻りますので…」 「あ~待て待てノア」 「? なんですか? なにか急な用事でも……」 「いや……今日は俺も一緒に行くわ」 フェレンツェ・カークランド 35歳 若くしてその天才的な頭脳で英国国立大学の名誉教授にして博士の称号を持つ現代のネット社会における国際的重要人物 『人と神姫のコミュ二ケーション』を題材に超極秘間で研究を行っており、現在、日本を代表する大手技術会社『鳳条院グループ』と共同で『人型神姫インターフェイス』の試作型の開発、運用テストプロジェクトを進行中 妻子あり…………って 「おお、ノアール!! 私の可愛いノッア~~~ル!!!」 「……博士、何度も言いますが私のご主人様は明人さんで、実質的に私は明人さんのものなんですが……私の名前も明人さんに付けて頂きましたし…」 そんな大物人物を誰がこんなオヤジと想像できようか…… これもまたひとつの『恐怖』か? 「おお!! この父を見捨てて違う男の下へと行こうと言うのかい!? 泣いちゃうよ? パパは泣いちゃうんだからね!?」 「……誰がパパですか…」 「しかし、それもまた愛しき娘の巣立ちの日!! いつかは来るその別れ…しかし私にはそのDestinyに打ち勝つ力はない、ああ、まるで私はシ●・アスカのよう……主人公なのに最後は悪役という憐れな運命に……」 “パコッ”っと軽い音 「あでっ!!」 久々にでました、ノアのスリッパツッコミ 自分の父親に対しても容赦ねぇな…(こんな親父だからか?) 「いてて、酷いよノアール~;」 「何、馬鹿なこと言ってるんですか」 「馬鹿とはナンダイ!! パパに向かって!! 私はそんな風に君を育てた覚えは…」 「無いに決まってるじゃないですか。今まで私を育ててくれたのは…明人さんなんですから……」 そうなんだわな 5年前のノアはホント全くの世間知らずで箱入り娘、イチから常識を教え込むのは大変だったなぁ……俺の入浴中に風呂場にスッポンポン(プラス無表情)で入ってきたり ホラー映画のDVD見せたらテレビ画面ごと映ってるゾンビを叩き割るし… なんでもジジイ曰く、ノアは『人型神姫インターフェイス』のなかでもプロジェクト的にはゼロから始めた初号機ってんで、サンプル採集に適さないかも知れないからって最低限の知識以外は初期入力を行ってはいなかったらしい ホント、よくここまで育ったもんだ… これじゃ俺のほうが父親みたいな心境だな…… 「……なんですか? ご主人様」 やっぱり自分も同じことを考えていたんだろうな…… ノアが少し頬を赤くしながらジト目で俺を見てやがる 今日はなにかとデジャヴが多いですね~ノアールさん 「いーや? よくもあんな無防備なノアとの二人暮しの日々に平常心を貫いて耐えたものだと自我自賛」 「……ただのへタレでは無かったのですか…」 「? なんか言ったか?」 「いえ、何でもあり…」 「NO~~~!!! それではあれかい!? つまりはだね、『私をアナタ色に染めてください、ご主人様(ハート)』ってヤツなのかい? そうなのかい? ノアール。そうだとしたらパパもう本気で泣いちゃうよ? パパは本気と書いて『マジで』泣いちゃうんだから……」 “パコォッ!”再び軽い音……って、心なしかさっきよりも音が鋭い 「あでっ!!!」 本日二本目のノアのスリッパツッコミ つうか流暢な日本語でなにを言っとるんだ、このオッサンは…… 「まったく、このダメ親父は……」 「……三人の時もこうなのか?」 「はい、ですがいつもはユーナがツッコミ役です。」 「……なんで?」 「コレの相手は疲れますので、任せてあります。」 ……ついにはコレ扱いされる天才博士ってどうよ? 「……んで、もうメンテもサンプルデータ回収も終わったんだろ?」 「ん? あぁ、メンテナスに関してはなんの問題も無いよ。むしろ良好ってとこかな…」 「そうなのか?」 「いや、私に聞かれましても……」 「……明人君、ちょっと……」 「? なんですか?」 手招きされて今いる博士の書斎の隅まで連れて行かれる… 「いや、なんてことはないのだがね? その………最近何かあった?」 「は? いきなりなんですか?」 「いやちょっと気になることが…」 なぜかあまりハッキリしない博士 「まぁ、心当たりぐらいはいくつか……」 なにせうちの『かしまし娘達』だからな… 「その中でも最近まで起こらなかった…特別な事って無かったかい?」 「特別な事…ですか? そうですね……俺がまたナノロットに乗った事ぐらい…ですかね…」 「!!! ほんとかい? すまないがその事、もう少し詳しくお願いできるかい?」 やけに真剣になった博士にしばし押され気味になってはいたが、俺はこの前の葉月の誕生日パーティでの出来事を博士に説明した 「……なるほどね……そんなことが…」 あらかた説明し終わると今まで黙って話を聞いていた博士はそう呟いた 「それで?」 「はい? それでって……これで終わりですけど…」 「ああ、そうじゃないんだ、これからだよ。これから君はどうするんだい?」 「これから……」 俺は思い返してみる ノアの言葉、葉月の言葉 ゴレの残した『2つ名の示す意味』というセリフ そして、俺と敵対するであろう…アイツのことを…… 「……分かりません。まだ俺には何とも言えない…」 「……そうか…でもひとつだけ覚えておいて欲しいんだ…」 「…なんですか?」 「君はこれから激しい戦いに巻き込まれて行くかもしれない。しかしそれは君の過去との決別だ。なにが起ころうと誰も君を責めたりはしない、むしろ君のために力を貸してくれる人間や神姫はいっぱいいる……もちろんノアールやミコやユーナ…それに私もね…」 「博士……」 「だから忘れないで欲しい、確かに君は『死の恐怖-スケイス-』でもあるが『橘 明人』であり……彼女らのかけがえの無いマスターでもあるということを……」 そういってノアの方に目線を向けるフェレンツェ博士 その顔は今まで見た中で一番父親らしい顔であった… 「わかしました…でもなんで何かあったって解かったんです?」 「ん? いやーそれがね~、さっき調べたサンプルデータに出てたんだが…ノアールの可動情報伝達系、つまり人間で言うと心拍数にあたるところなんだが…その数値が急激に上昇する傾向が多く出ていてねぇ……」 「!! それってなにかやばいんじゃ…」 「いやそれが、その上昇時というのは主に2パターンあって、ひとつは戦闘中などの激しい運動をしたときなんだが…これはいつもとかわらない。ノアールは明人君と一緒に神姫バトルに参加してるしね」 「そうなんですか……もうひとつは?」 「もうひとつは…ふふふふ、これがまた可愛いんだよ。なんと!! 『数値が急激に上昇するときにはある人物のことを見ている』っていうデータが残っていてね? つまり、その人を見ると心臓がドキドキしてきて止まらない~ってやつ? カッワイイよねぇ~」 「はぁ……あのノアがですか………」 いつも淡白な表情してることが多いからな………って、い、いいいぃ!!!! 「それで最近何か急展開が起きたのかと……ま、あれなんだけどね? もちろんその人物っていうのは他でもない……」 「は、博士、う、後ろ! うしろぉぉぉ!!」 「? なんだい、これからいい所なの……」 “ブオン!!”という音と共に迫り来る 「…………に?」 “ドッンガラガッシャァァァァァン!!!!”っとぶつかる 「あwせdrftgyふじこlp;!!!!!!」 ノアがぶん投げたのは長椅子型のアンティークソファー それに押し潰されながら博士は虫の息のようだ 「はぁ、はぁ…はぁ、はぁ……この……ダメ、親父は…はぁ、はぁ…」 珍しく息を切らすノアの顔はまたコレも珍しいほどに真っ赤に染まっていた 「お、落ち着け、ノア」 「………ふぅ、……はぁ……帰りますよ、ご主人様」 小さな声でつぶやいたノア 「え? もういいのか? 最後に挨拶ぐらい…」 「い・い・か・ら・か・え・り・ま・す・よ?」 「……はい…」 そういって踵を返すノア……こ、怖えぇ……いつもより声が低すぎだろ… 俺もノアの後に続いて部屋の出口の方へと向かう 「の、ノアール……いまさら…素直になれない…そんなクール系ツンデレもまた…も…」 “ヒュン!!”飛ぶ “パコン!!!”当たる 「萌ヴェッ!!!??」 “ガクッ”ご臨終… ノアの投げたスリッパが頭に当たって力尽きる国際的重要人物であった……… 追記 「………なにをやっとるんだ、お前らは…」 「オウ! ア~ニキぃ!! おっ帰り~♪」 「にゃはははは!! 今日のツアーの二次会だよ~ん♪」 「お邪魔しています、明人さん」 「ん? おう、リャンか、久しぶりだな」 「ええ、この前は何かと騒がしかったもので…」 「ところで……この山の様なお酒の空瓶は一体どこから…」 「ぜ~んぶ雄也サンの奢りなんだよ~にゃはははは!!」 「明人先輩…う、うぅ…俺は、俺はぁぁぁ!!」 オイオイ絡み酒かよ…どうせ有り金ほとんどたかられたんだろ? 「す、スイマセン明人さん;ほら、マスター!! しっかりして下さい!!」 「ほぅらぁ~~、あ~にぃきぃもぉ~」 「おい、ちょ、ちょと待てユー…じゃない、優奈!! お前それ一升瓶…」 「問答無用ぉ!! 姉さんと二人っきりでデートとは…何事かぁぁ!!」 「そーだそーだ! なにごとかぁ!! にゃははははは!!」 「明人先輩~俺は、俺はぁぁぁぁぁ!!」 「あ~もう!! 三人そろって俺に群がるなぁぁぁぁぁぁ!!」 「………はぁ…やっぱり、かしまし娘ですね…」 だからノアールさん、あなたも含まれてるんですってば!! 続く メインページへ このページの訪問者 -
https://w.atwiki.jp/combo-br/pages/30.html
Carnival 魔法使いは笑っている。 自分が演出した舞台が、思惑通りに進行していくことに。 枷をはめられた哀れな生け贄たちが、掌の中で踊っていることに。 瞳に映る幾十の姿がもがき苦しむ様を見て、愉悦に浸り口の端を醜く歪ませる。 進め、進め。破滅へと突き進め。しかしこの破滅は終わりではない。 この破滅は――始まりなのだ。破滅の先には願いが残る。願いと共に、始まりがある。 今、更に命が失われた。 ◇ 『彼』が牙を剥いたとき、少女の命は即座に奪われた。 痛みを感じる暇さえもなく、本当に呆気なく、少女は死んだ。 『彼』の心に人を殺した忌避感などない。『彼』はこれまでに、何度も何度も人の命を奪ってきた。 人を殺すことを生業にして、『彼』は今まで生きてきた。 だからといって、『彼』が生来のシリアルキラーであったり、殺人に異常な執着を見せる性癖を持ち合わせているというわけではない。 『彼』が人を殺すのは、『彼女』を守るためだ。 『彼女』をありとあらゆる害と悪から守り抜くために得た知識と技術を用いて、『彼』は仕事/殺人を遂行する。 依頼成功率100%――東日本最高の殺し屋の異名を持つ『彼』の名は、弑・四方儀。 弑は、この殺人ゲームにおいて、狩る側になることを決めた。 最終的な目的は、殺人ゲームに巻き込まれた『彼女』を生還させること。 最初はゲームの趣旨に反して『彼女』を会場から脱出させることも考えたが、不正な手段で逃亡したところで再び『彼女』に危険が迫る可能性が高い。 ならば、選ぶべきは正攻法――『彼女』を最後の一人にするしかない。 プレシアが最後の一人に手出しをしない保証はない。 しかし、それでも、それが『彼女』の安全を守る最善の策ならば、弑は乗るしかない。 幸いにして、殺人は弑が最も得意とする分野だ――勝算は十分にある。 静馬夕歩、と名乗った少女には弑の方から近付いた。 いきなり襲うような真似はしない。無害を装い、相手の警戒心をなるたけ解いてからの接触。 二言三言かわしただけで静馬は弑に対する警戒を解き、口下手ながらに彼女とその知り合いの情報を喋ってくれた。 夕歩には、このような殺し合いに巻き込まれる覚えはないこと。 彼女の学友たちの名前も名簿に記されていたこと。 皆ある程度の剣の心得はあるものの、殺し合いの経験など皆無な一般女学生であること―― そこまで聞いて、弑は夕歩の殺害を決行した。 じゃれつく子猫のように、後ろから夕歩に抱きつく。 最後の表情は、困惑したような、照れたような、とても可愛らしいそれ。 見るもの全てを蕩けさせるような表情を浮かべたまま、夕歩の首が90度折れ曲がる。 武器の一つも使わずに、弑は静馬夕歩の命を奪い去った。 「まず、一人――」 表情一つ変えず、夕歩に支給された装備を物色する。 弑の中には人を殺したことによる罪悪感も達成感も何もない。 まだ、一人。弑はこれから数十の命を奪わなければならないのだ。 こんなところでいちいち心を動かす余裕などない。 がたり。 振り返る――尻餅をついた少女が、視界の中に入ってくる。 少女は目尻に涙を浮かべ、がたがたと震えている。 弑を見て――ではなく、首があり得ない方向に折れ曲がった夕歩の死体を見てのことだろう。 少女が着るセーラー服とこの反応からして、夕歩と同じく荒事とは縁遠い『表』の世界の人間に違いない。 「おい」 「ひっ……!」 ああ――間違いない。こいつは、今までぬくぬくと生きてきただけの人間だ。 自分が生きていることが当たり前過ぎて、生きることに必死になったことがない人間だ。 「お前は、死にたくないと思うか?」 唐突な問いかけにしばらくぽかんとしていた少女だったが、言葉の意味を理解した途端に、強く頷き始めた。 既に涙は目尻から溢れ、しかし腰でも抜けたのかべたりと地面に尻をつけたままだ。 醜いな、と弑は思う。生きることに無頓着な人間ほど、死に際は醜い。 逆に悪人ほど、死に際は潔い。悪を為して身を成した人間には、死に対する覚悟がある。 そういう意味で、この少女は呆れ返るほどに善人なのだろう。 誰だって、死にたくなんかない。 それでも死は、すべての人間に平等に訪れる。 要はそれが早いか遅いかというだけの違いだ。 その違いに、人は執着する。そのために、鬼にも悪魔にもなる。 「死にたくない――なら、どうしてぼくを殺そうとしない? ぼくを殺せれば、少なくとも目の前の危険は排除できる。 そのくらい分かってるだろう?」 それさえも分かっていないのなら、最初からこんな猶予を与えたりはしない。 少女の手に黒く光る拳銃が握られていたからこその質問だ。 「この場所に、お前の知り合いはいるか?」 ぷるぷると小動物のように少女は頷く。 「お前は、そいつらを殺せるか? そいつらを殺して、自分が生き延びる道を選べるか?」 少女の嗚咽は、更に激しくなる。 薄々と、弑がこの質問をしてきた意味を理解したのだ。 もし、最後の一人を目指すとして。 一人で他の四十人弱を殺すのは、非効率極まりない。 最後の一人になれればいいのだ。人数を減らすのは、必ずしも自分でやらなくとも。 たとえば、そう。見ず知らずの人間よりも、元々知り合いだった人間の方が、まだ信用できる。 そこに、隙が生まれる。だから、殺人の難易度だけ考えれば、知り合いを殺す方が、きっと簡単だ。 油断した隙を狙えば、きっと、わたしでも殺せる。 わたしなら――宮永咲なら、清澄のみんなを、殺せる。 殺せると言えば、わたしはきっと見逃されるだろう。 その代わり、わたしはきっとみんなを殺さなければいけなくなる。 原村さんと、優希ちゃんと、部長を。 わたしは、殺せる? 自分が生き延びるために、みんなを殺せる? 答えが――答えが、出なかった。 この沈黙は、否定としか捉えられないだろう。 きっとわたしも殺される。あそこで転がっている子のように首を折られて殺されるのか。 この銃を奪われて撃たれるのか。奪われる前に撃ってしまう? ううん、きっとそんなことは出来ない。 結局のところ、わたしは何にも決められなかったのだ。 殺したくない――死にたくない。 どちらを選ぶことも出来ず、ただ黙っているだけ。 死にたくないなら、這いつくばってでも命乞いをして、誰でも殺すと言えばいい。 殺したくないなら、胸を張ってそう答えて、誇りを抱えて死ねばいい。 どちらも選べない半端者のわたしは、きっとこのまま死んでいく。 涙と一緒に色んなものを垂れ流して、後悔にまみれて死んでいく。 こんな異常な場所で、普通でいたくて。 でもこんな異常な場所で普通を貫けるだけの異常でもなくて。 わたしは、ただここで―― 「――死になよ」 【静馬夕歩 死亡】 【宮永咲 死亡】 ◇ ――都城王土は、生まれながらにしての王だった。 王となるべくして生まれた彼は、王となるべき力を持ち、しかし王となることを拒んだ男でもあった。 彼の言葉は王の言葉だ。 王の言葉は絶対で、だから彼の言葉を聞いたものは逆らうことが出来なかった。 しかし律せぬ力だけを持てば、暴君にしかなり得ない。 力を支配できるだけの心があってこそ、王は王たりえる。 彼は、王の地位を拒み、王の力を自制すべく、王を捨て、人を避けた。 だが――『王』は、彼を掴んで離さなかった。 幾年にも及ぶ彼の努力もむなしく、王の力はまるで呪いのように彼の心さえも蝕んだ。 己の持つ力に屈した都城王土は、だれも寄せ付けぬ絶対にして傲慢な王となった。 「――跪け(ヒザマズケ)」 王土の言葉に、また一人地に倒れ伏す。 倒れた男の名はスプレイ。超古代文明の機器を全身に組み込んだ機械人間(チューンマン)。 取るに足らぬ愚民の一人であるスプレイが、どうして王に逆らうのか。 いくら歯向かったところで、王の前には平伏すのみ。何も得るものなど無いというのに。 「見ず知らずの小娘を助け、それで満足か? 機械男よ」 「……プシュー。うるせーんだよ、ファック野郎。ンだおめー、王だのなんだの。 いい歳こいて厨二病かよ、ダッセーな」 「フン、減らず口を。あくまで俺に歯向かうというのなら――よかろう。そこで朽ちていけ」 王を敬え。崇めよ。平伏せ。跪け。服従せよ。 王の命令がスプレイの痩身を縛る。 言葉は更に激しく、熾烈なものになる。 王土の言葉の正体――それは、電気信号そのものの放出。 生物も、機械も、突き詰めれば電気信号による命令で動いている。 王土はその命令そのものを上書きし、電気の届く範囲にあるありとあらゆる存在を、自分の意のままに操ることができるのだ。 スプレイの全身に埋め込まれた機械が、悲鳴を上げる。 主の意にそぐわぬ命令が、絶え間なしに送られてくる。 既に、どの命令が本物で、どの命令が偽物か判別さえもままならない。 「ぐッ……!」 「辛いか? 苦しいか? それこそが、王に逆らった罰だ」 ――死ね(シネ)。 【スプレイ 死亡】 ◇ 加治木ゆみは、走っていた。逃げ出したのだ。 自ら王を名乗る男と、自分をかばってあの場に残ったスプレイと、その両方から。 逃げ出して、生き延びてしまった。 修羅場の経験一つないゆみでさえ、正対した瞬間に悟ったのだ。 ――この人間は、自分とは違う。生物としてのステージが、まるで違う。 あの場にいれば、自分は真っ先に命を落としていたに違いない。 だから、逃げろと言われた途端に、脇目も振らず逃げ出した。 私は、弱い人間だ。 牌を少々握れる他には取り立てて取り柄もなく、至極平凡な人生を歩んできた。 喧嘩さえもろくにしたことがなく、まして命の奪い合いをすることになるなど、想像の埒外もいいところだ。 だが、現実として、私はいつ命を奪われてもおかしくない盤上に立たされている。 何故、自分が――と、思う気持ちも少なくない。 先に述べたように、私には特別なものなど何もないからだ。 選別に何かしらの基準があったとして、自分がそれにパスするとは到底思えなかった。 いや、むしろ――誰でもいい、のか。 普通であるということが、ステータスなのか。 逃げ惑い、泣き叫ぶ役も、この死亡遊戯には必要ということか。 ――会いたい。会いたいよ、モモ。 走るのに疲れ、思考に疲れ、最後に浮かんできたのは後輩の顔だった。 東横桃子――ゆみが最も信頼する、鶴賀高校麻雀部の一員だ。 彼女を初めて見つけたときのあの感覚は、今でも覚えている。 歓喜と期待が入り交じったそれはゆみの身体を震わせ、後輩の教室まで赴き公衆面前の前で桃子を求めるほどの熱を生み出した。 その熱が、段々と形を変え――今では、熱ではなく、温もりになっている。 傍にいてほしい。ただ、そう願える存在になっていた。 桃子の名前も、名簿には記されていた。 もう、二人でずっと一緒にいることは、叶わない夢になってしまった。 せめて、会いたい。何も言えないまま別れるのだけは嫌だ。 会って、今までどれだけお前に助けられてきたのか、伝えたい。 伝えたい気持ちは、いっぱいあるんだ。話したいことも、いっぱいあるんだ。 ――でも、もう、どんな顔をしてお前と会えばいいのか、分からなくなってしまったよ。 自分はスプレイを見殺しにした。逃げたんだ。 そこまでして、生き延びても――胸を張って、お前と会えない。 ――私は、生きたいのかな。それとも、死にたいのかな。 ◇ 魔法使いが笑っている。 舞台は進行している。もう、誰にも止められやしないだろう。 儀式は完遂され、悲願は成就する。 愛しい我が子も、更なる怒りと悲しみを振り撒いている。 数日もしないうちに、蟲毒は完成する。 最後の一人になるまで、殺せ、殺せ、殺し合え。 残り――34人。 【D-5 市街地】 back シリアス・プラン next BAD DREAMS 弑 夕歩 咲 王土 スプレイ ゆみ
https://w.atwiki.jp/holyland4/pages/210.html
『“The Transfer” No.1』 目が覚めると、青空が広がっていた。 小鳥の囀りが聞こえる、気持ちの良い朝だ。背中に当たるベッドの感触が随分固いのを除けば、何も文句はない。早朝の空気は少しだけ肌寒いが、それも心地良い。 こんな清々しい気分は果たして何年振りだろう。 ──────────何年振りだろう? 少女は身を起こした。固いベンチで寝ていた所為で身体の節々に痛みが残っていたが、そんな事はどうでも良かった。 数秒。 自分の頭の中を検索する。 何もない。 いや、完全にゼロな訳ではない。ただ、大事な部分が欠落していた。 自分を構成する要素が、消えていた。 それを記憶喪失と呼ぶ知識は残っている。囀る鳥たちが雲雀だという事も知っているし、街路に見える並木も栃の木と呼ばれる事も知っている。しかし、それを認識する自分自身が一体何者なのか──────────そこだけが綺麗に、根こそぎ、跡形もなく。 ぽっかりと穴が開いていた。 呆然としていたのだと思う。どれ程の時間、そうしていたか分からないくらいに。 隣に誰かが座るまで、全く何も気付かなかったのだから。 「…………大丈夫?」 掛けられた言葉に俯いていた顔を上げると、そこには心配そうな表情を浮かべた可愛らしい少女──────────いや、少年の姿があった。女性寄りの中性的な顔立ちと声は、何故か少女の胸の内側を少しだけノックした。 「大丈夫…………です」 まるっきりの嘘という訳でもなかった。記憶が消えている事を除けば、身体の調子は決して悪くない。 きゅるるるる……。 少女の言葉を補完するように、健康的な腹の虫が鳴いた。 見ず知らずの相手に聞かれ、少女は赤面する。恥ずかしい、と思う感情が消えてしまっている心配はなさそうだった。 「あはは…………ちょっと待ってて」 少年は道路の反対側にあるコンビニへと駆け込むと、数分も経たないうちに戻ってきた。その手にはお茶のペットボトルが二本とおにぎりが三つ。 「僕もまだだったんだ。良かったら一緒にどう?」 断る理由。何かに対して意見を持つには、今の自分はあまりにも根が生えていなかった。何より、空腹には勝てない。 遠慮がちに手を伸ばしたのは一つ目の時だけで、気が付けば二つ目のおにぎりを頬張っていた。 ふと顔を上げると、少年はまだ一つ目の半分程を食べている最中。 「ご、ごめんなさい、つい…………」 恥じ入る少女に対し、少年は気にしないで、と手を振った。 「ご飯食べてる女の子って、可愛いよね。僕、家では結構料理作るんだけど、自分の作った料理を美味しそうに食べてもらうのを見るの、好きなんだ」 可愛い、と言われた事は初めて──────────かどうかは分からないが、それでも少し心が弾んだ。自分が何者か分からぬ状況で掛けられた、自分を認める温かい言葉に。 「コンビニのおにぎりも悪くないけど、やっぱり朝はちゃんとしたもの食べたくなるね…………君は、何か好きなものとかある?」 突然振られた質問に、少女の思考が止まる。好きな食べ物。何も思い出せない自分には答えなど──────────。 「…………に、肉じゃが」 口を突いて出た言葉に、少女自身が驚きを覚えた。何故、その答に至ったのか分からない。ただ、少しだけ胸がしくりと震えた。 「肉じゃが…………なかなか渋いね」 年頃の少女の好みからは外れていそうな意外な答に少年も一瞬虚を衝かれたのかきょとんとしたものの、すぐに柔らかい笑みを浮かべ直して続けた。 「でも、どっちかというと僕も和食派かな。肉じゃがも得意で、良く作ってる」 「そうなんだ…………」 「自分で言うのもなんだけど、味には結構自信あるんだ」 「だったら…………食べてみたい、かも」 何気ない会話。応じる必要などない筈なのに。 それでも自分が何をすべきかさえ分からない少女にとって、他愛ない会話は何処かへ飛んでいってしまいそうな己を繋ぎ止める礎だった。束の間境遇を忘れ、少しだけ笑った。 「…………さてと、それじゃそろそろ行かないと」 お粗末な朝食を腹に詰め込み終えると、少年は立ち上がった。 「帰るんですか?」 「そうしたいんだけどね。ちょっと追われてて、まっすぐ帰るのは危ないかな」 それまで安穏としていた少年の言葉に、不意に物騒な空気が混じる。 「追われて…………」 「うん。君も、今はイベントのせいで治安が悪くなってるところもあるから帰る時は気をつけてね」 追われる──────────イベント──────────帰る──────────。 心に引っ掛かる言葉。だが、それは形にならない。ただ、少年を見送る事しか出来ずに。 目的もなく歩き始めた少女の視界に、イベントの為だけに短期間設置された大型の街頭テレビが映る。 当然のように特集されているイベント、『世界格闘大会』。そこに映し出された少女の姿は。そこに映し出された少年の姿は──────────。 『忘却の影』 の物語は、ここから始まる。 <了>
https://w.atwiki.jp/kaismasi/pages/26.html
「……なんか……ダルイな……」 一難去ってまた一難…なんて言葉があるけれど…それってかなり極端な例ではないだろうか そりゃ、少年誌のバトル漫画じゃ次々と新しい脅威の対象やらライバルやらこの後どうなる!! 的な流れを止めちゃいけないってのも理解できるんだよ? ああ、俺もそんなチープな流れは嫌いじゃないさ…でもいざ我が身に降りかかったとなったときはまた別ってもんだ 俗に言う「戦士に休息を」ってやつなのかねぇ? 昔はこんなにくたびれた事なんてなかったんだが…… いかんせん俺も老けたのか? ……嫌だぞ、25の若さで自分の神姫に介護してもらうなんて…… 「なにをボケッとしてるんですか? ご主人様」 「……考え事してるマスターに対してその発言は酷すぎやしないか?」 「そうですか? 『パートナー』としてはもっともな忠告だ…とでも解釈してください」 あなたの中での俺はどんだけポジティブ思考なんですか… そこまで前向きならむしろ憐れ…… 「ん? 出かけるのか?」 「はい、フェレンツェ博士の研究所の方に…」 「ミコとユーナは? 一緒じゃないのか?」 「今日は雄也さんと一緒に『秋葉原、武装パーツめぐり&グルメツアー』なんだとか」 「? ミコかユーナのどちらか一人とならわかるんだが、なんで二人同時なんだ?」 「なんでもお互いにボディガード役を兼ねているらしいですよ?」 前言撤回、俺よりも憐れなヤツがいた たかられ損だな雄也…… 「では行ってきます。夕飯までには戻りますので…」 「あ~待て待てノア」 「? なんですか? なにか急な用事でも……」 「いや……今日は俺も一緒に行くわ」 フェレンツェ・カークランド 35歳 若くしてその天才的な頭脳で英国国立大学の名誉教授にして博士の称号を持つ現代のネット社会における国際的重要人物 『人と神姫のコミュ二ケーション』を題材に超極秘間で研究を行っており、現在、日本を代表する大手技術会社『鳳条院グループ』と共同で『人型神姫インターフェイス』の試作型の開発、運用テストプロジェクトを進行中 妻子あり…………って 「おお、ノアール!! 私の可愛いノッア~~~ル!!!」 「……博士、何度も言いますが私のご主人様は明人さんで、実質的に私は明人さんのものなんですが……私の名前も明人さんに付けて頂きましたし…」 そんな大物人物を誰がこんなオヤジと想像できようか…… これもまたひとつの『恐怖』か? 「おお!! この父を見捨てて違う男の下へと行こうと言うのかい!? 泣いちゃうよ? パパは泣いちゃうんだからね!?」 「……誰がパパですか…」 「しかし、それもまた愛しき娘の巣立ちの日!! いつかは来るその別れ…しかし私にはそのDestinyに打ち勝つ力はない、ああ、まるで私はシ●・アスカのよう……主人公なのに最後は悪役という憐れな運命に……」 “パコッ”っと軽い音 「あでっ!!」 久々にでました、ノアのスリッパツッコミ 自分の父親に対しても容赦ねぇな…(こんな親父だからか?) 「いてて、酷いよノアール~;」 「何、馬鹿なこと言ってるんですか」 「馬鹿とはナンダイ!! パパに向かって!! 私はそんな風に君を育てた覚えは…」 「無いに決まってるじゃないですか。今まで私を育ててくれたのは…明人さんなんですから……」 そうなんだわな 5年前のノアはホント全くの世間知らずで箱入り娘、イチから常識を教え込むのは大変だったなぁ……俺の入浴中に風呂場にスッポンポン(プラス無表情)で入ってきたり ホラー映画のDVD見せたらテレビ画面ごと映ってるゾンビを叩き割るし… なんでもジジイ曰く、ノアは『人型神姫インターフェイス』のなかでもプロジェクト的にはゼロから始めた初号機ってんで、サンプル採集に適さないかも知れないからって最低限の知識以外は初期入力を行ってはいなかったらしい ホント、よくここまで育ったもんだ… これじゃ俺のほうが父親みたいな心境だな…… 「……なんですか? ご主人様」 やっぱり自分も同じことを考えていたんだろうな…… ノアが少し頬を赤くしながらジト目で俺を見てやがる 今日はなにかとデジャヴが多いですね~ノアールさん 「いーや? よくもあんな無防備なノアとの二人暮しの日々に平常心を貫いて耐えたものだと自我自賛」 「……ただのへタレでは無かったのですか…」 「? なんか言ったか?」 「いえ、何でもあり…」 「NO~~~!!! それではあれかい!? つまりはだね、『私をアナタ色に染めてください、ご主人様(ハート)』ってヤツなのかい? そうなのかい? ノアール。そうだとしたらパパもう本気で泣いちゃうよ? パパは本気と書いて『マジで』泣いちゃうんだから……」 “パコォッ!”再び軽い音……って、心なしかさっきよりも音が鋭い 「あでっ!!!」 本日二本目のノアのスリッパツッコミ つうか流暢な日本語でなにを言っとるんだ、このオッサンは…… 「まったく、このダメ親父は……」 「……三人の時もこうなのか?」 「はい、ですがいつもはユーナがツッコミ役です。」 「……なんで?」 「コレの相手は疲れますので、任せてあります。」 ……ついにはコレ扱いされる天才博士ってどうよ? 「……んで、もうメンテもサンプルデータ回収も終わったんだろ?」 「ん? あぁ、メンテナスに関してはなんの問題も無いよ。むしろ良好ってとこかな…」 「そうなのか?」 「いや、私に聞かれましても……」 「……明人君、ちょっと……」 「? なんですか?」 手招きされて今いる博士の書斎の隅まで連れて行かれる… 「いや、なんてことはないのだがね? その………最近何かあった?」 「は? いきなりなんですか?」 「いやちょっと気になることが…」 なぜかあまりハッキリしない博士 「まぁ、心当たりぐらいはいくつか……」 なにせうちの『かしまし娘達』だからな… 「その中でも最近まで起こらなかった…特別な事って無かったかい?」 「特別な事…ですか? そうですね……俺がまたナノロットに乗った事ぐらい…ですかね…」 「!!! ほんとかい? すまないがその事、もう少し詳しくお願いできるかい?」 やけに真剣になった博士にしばし押され気味になってはいたが、俺はこの前の葉月の誕生日パーティでの出来事を博士に説明した 「……なるほどね……そんなことが…」 あらかた説明し終わると今まで黙って話を聞いていた博士はそう呟いた 「それで?」 「はい? それでって……これで終わりですけど…」 「ああ、そうじゃないんだ、これからだよ。これから君はどうするんだい?」 「これから……」 俺は思い返してみる ノアの言葉、葉月の言葉 ゴレの残した『2つ名の示す意味』というセリフ そして、俺と敵対するであろう…アイツのことを…… 「……分かりません。まだ俺には何とも言えない…」 「……そうか…でもひとつだけ覚えておいて欲しいんだ…」 「…なんですか?」 「君はこれから激しい戦いに巻き込まれて行くかもしれない。しかしそれは君の過去との決別だ。なにが起ころうと誰も君を責めたりはしない、むしろ君のために力を貸してくれる人間や神姫はいっぱいいる……もちろんノアールやミコやユーナ…それに私もね…」 「博士……」 「だから忘れないで欲しい、確かに君は『死の恐怖-スケイス-』でもあるが『橘 明人』であり……彼女らのかけがえの無いマスターでもあるということを……」 そういってノアの方に目線を向けるフェレンツェ博士 その顔は今まで見た中で一番父親らしい顔であった… 「わかしました…でもなんで何かあったって解かったんです?」 「ん? いやーそれがね~、さっき調べたサンプルデータに出てたんだが…ノアールの可動情報伝達系、つまり人間で言うと心拍数にあたるところなんだが…その数値が急激に上昇する傾向が多く出ていてねぇ……」 「!! それってなにかやばいんじゃ…」 「いやそれが、その上昇時というのは主に2パターンあって、ひとつは戦闘中などの激しい運動をしたときなんだが…これはいつもとかわらない。ノアールは明人君と一緒に神姫バトルに参加してるしね」 「そうなんですか……もうひとつは?」 「もうひとつは…ふふふふ、これがまた可愛いんだよ。なんと!! 『数値が急激に上昇するときにはある人物のことを見ている』っていうデータが残っていてね? つまり、その人を見ると心臓がドキドキしてきて止まらない~ってやつ? カッワイイよねぇ~」 「はぁ……あのノアがですか………」 いつも淡白な表情してることが多いからな………って、い、いいいぃ!!!! 「それで最近何か急展開が起きたのかと……ま、あれなんだけどね? もちろんその人物っていうのは他でもない……」 「は、博士、う、後ろ! うしろぉぉぉ!!」 「? なんだい、これからいい所なの……」 “ブオン!!”という音と共に迫り来る 「…………に?」 “ドッンガラガッシャァァァァァン!!!!”っとぶつかる 「あwせdrftgyふじこlp;!!!!!!」 ノアがぶん投げたのは長椅子型のアンティークソファー それに押し潰されながら博士は虫の息のようだ 「はぁ、はぁ…はぁ、はぁ……この……ダメ、親父は…はぁ、はぁ…」 珍しく息を切らすノアの顔はまたコレも珍しいほどに真っ赤に染まっていた 「お、落ち着け、ノア」 「………ふぅ、……はぁ……帰りますよ、ご主人様」 小さな声でつぶやいたノア 「え? もういいのか? 最後に挨拶ぐらい…」 「い・い・か・ら・か・え・り・ま・す・よ?」 「……はい…」 そういって踵を返すノア……こ、怖えぇ……いつもより声が低すぎだろ… 俺もノアの後に続いて部屋の出口の方へと向かう 「の、ノアール……いまさら…素直になれない…そんなクール系ツンデレもまた…も…」 “ヒュン!!”飛ぶ “パコン!!!”当たる 「萌ヴェッ!!!??」 “ガクッ”ご臨終… ノアの投げたスリッパが頭に当たって力尽きる国際的重要人物であった……… 追記 「………なにをやっとるんだ、お前らは…」 「オウ! ア~ニキぃ!! おっ帰り~♪」 「にゃはははは!! 今日のツアーの二次会だよ~ん♪」 「お邪魔しています、明人さん」 「ん? おう、リャンか、久しぶりだな」 「ええ、この前は何かと騒がしかったもので…」 「ところで……この山の様なお酒の空瓶は一体どこから…」 「ぜ~んぶ雄也サンの奢りなんだよ~にゃはははは!!」 「明人先輩…う、うぅ…俺は、俺はぁぁぁ!!」 オイオイ絡み酒かよ…どうせ有り金ほとんどたかられたんだろ? 「す、スイマセン明人さん;ほら、マスター!! しっかりして下さい!!」 「ほぅらぁ~~、あ~にぃきぃもぉ~」 「おい、ちょ、ちょと待てユー…じゃない、優奈!! お前それ一升瓶…」 「問答無用ぉ!! 姉さんと二人っきりでデートとは…何事かぁぁ!!」 「そーだそーだ! なにごとかぁ!! にゃははははは!!」 「明人先輩~俺は、俺はぁぁぁぁぁ!!」 「あ~もう!! 三人そろって俺に群がるなぁぁぁぁぁぁ!!」 「………はぁ…やっぱり、かしまし娘ですね…」 だからノアールさん、あなたも含まれてるんですってば!! 続く メインページへ このページの訪問者 -
https://w.atwiki.jp/alliance2000/pages/313.html
ドロップ・ルインが初めて彼女を知ったのはその夜だった。 我がガリア王国は大陸の北部を奪うべく攻撃を仕掛けるも、見るも無残に返り討ちにあっていた。俺は我が身かわいさで命からがら逃げだすも支給されたアームヘッド、ヨツアシをダメにしてしまったために荒野に放り出され、とりあえずは、と野宿の準備をしていた。 明日以降、隊長の待つサンパトリシアへ向かって歩き出さねばならない。とはいえ積んでおいた食料は少なくない。なんとかなるだろう。 その時に彼女と出会った。荷物を奪われてしまったのでともに野宿をさせてくれないか、と頼まれたのだ。快活でいて愛らしく、きっと皆に愛されるだろうと思った。名前をエクレーン・ラヴというらしい。 食材にもカネにもサンパトリシアへ向かうだけなら余裕がある以上、断る理由もなかったのでふたりで夜を明かすべく準備を進め、食事をとった。彼女の料理は非常に小慣れていて旨かった。 俺が男であるからには彼女と同じテントで眠るわけにもいかないので、テントは譲り、少しばかり距離を取って眠った。 翌日のことを考えると不安もあったが、しかし穏やかな眠りにつけた。旨いメシのおかげか。 だが、朝を迎える前に起こされる。 小さな騒音で目を覚ますと、荷物を取られていたはずの女がなぜか荷物を持ってその場を去ろうとしていた。 女は背中で驚きを表現すると一目散に逃げ出した。 つまり彼女はどうしようもない女だった。 ――当然彼女を追った。 思いのほか速い。速いが、しかし一応軍に従事する者、体は普段から鍛えてあったし、逃げ切ることを許しはしなかった。 十分に距離を詰め、彼女が肩にかけた自分の荷物を掴む。勢いよく倒れこむ女。ここに勝負は決した。 「自分の荷物を取られたら見ず知らずの男の荷物で補っていいのか?」俺の前で正座した女はばつが悪そうにしている。 「……ダメです」目を合わせまいと、端を見る女。 「俺もそう思うんだが」睨みつける俺。逃げ出すことを考えているようには見えない。だが身を守るために過度な謝罪はなく、いや、それ以前に一度でも謝られただろうか。 さっきまでの愛想のいい女の子ではない彼女に、怒るより前に興味がわいた。 「なんで盗ったんだ、荷物。サンパトリシアを目指すならなにもここで盗ることはないだろう」ガリア王国の主要都市サンパトリシア、二人の目的地は共通してそこのはずだった。 だとすると、今ここで俺の荷物を盗ってもその後の道のりは長い。一人ではきつくなかろうか。聞いた後に思ったのだが、それ自体が嘘か? 「食べ物やお金がほしかったわけじゃないので」しかし彼女の答えは違っていた。切羽詰っている気分の声で、嘘ではないように思えた。 しかしだとするとなんだろう、彼女の言葉を鵜呑みにしてはこの状況が分からない。やっぱり嘘をつかれている、と、そう考えれば筋は通るが、しかし。 「じゃあ、なんだ」女は黙る。 思うところがあるが、上手くつなげられない。 長い沈黙。仕方がない。 「わかった。じゃあメシもカネも盗らないでくれるんだな」 「それは……はい」 「じゃあいい。許す。約束通り、今後もメシを作ってくれるならサンパトリシアまで送り届ける」 提案。 そして沈黙。 「え?」意味が分からないという顔をしている。 「なんだ、ごろつきにレイプでもされたいのか」今は人なんて見当たらないが、今後はわからない。 「……あ、え」動揺しつつ、俺の考えを理解した様子でエクレーンは頭を下げた。 実際のところ、軍服に非常用の食料とわずかばかりの金は隠してあった。だから別にまた荷物を盗まれそうになっても、あるいは今度は本当に盗まれてしまっても、まあ生きて街までたどり着くことはできようと思っていた。それなら、荷物の一つも持たない女を木のほかに何もないような場所に置いていく罪悪感よりはいい。 それに、おとなしくメシを作ってくれるなら素直にうれしい。 そう思っての提案だった。 また少し安堵を漏らし、穏やかな顔になるその娘を、どうしてただの盗人と断じられようか。俺は軍人より聖職者の方が向いているのかもしれない。 「それで、できれば今度こそ素直に答えてほしい。なんで、というか、何を盗ろうと」 「それは、その、アームヘッドです。」なるほど。そりゃ離れない方がいい。今となってはデカいだけの時代に取り残された哀れなアームヘッドだが。まあそれでも金にはなるか。 「売るためとかではなくって、ただ、壊したいものが」俺の考えていることは読まれていた。何を壊すのかはわからないが、何かを壊すことが目的ならヨツアシは悪くない。破壊力だけは時代に取り残されていない。 と、そんなことを考えていると――。 辺りの木々が揺れ始める。ざあざあと音を立てて、この場の異変を伝えようとしている。焚いておいた火は消え、辺りが暗くなる。なる、はずなのだが実際はそうはならず、二人の元に青白い光が降った。 病じみた光の元は上。それを見る。 生者すら連れてゆく天使の如き苛烈。 夜に溶ける蒼白。 死を孕む姫。 自らの不幸を嘆くようにゆらゆら、ゆらゆらと、しかし確実にこちらを見ていた。